院長ブログ
(Blog)粉瘤治療
外陰部(デリケートゾーン)のできもの
外陰部のしこり、こぶ、おでき、できもので受診される方が増えています。
その一つの原因が粉瘤で、体のあらゆる部分にできる良性の皮下腫瘍です。
多くは背中、うなじ、顔、耳たぶ付近、外陰部にでき脂肪の塊といわれています。
半球状の平べったい塊で、真中近くに黒っぽい開口部が認められることがあります。
粉瘤の原因ははっきりしないことが多く、何らかの理由により皮膚の直下に袋状の構造物ができます。
袋の内側からは皮膚と同じように垢(角質)や皮膚の脂(皮脂)が分泌され袋にたまります。
医学的には類表皮嚢腫、外毛根鞘性嚢腫、脂腺嚢腫の3つを包括した診断名で、アテロームとも呼ばれています。
腫瘍の直径は1-2cm〈時に5cm以上〉で自然に治癒することは稀で、徐々に大きくなります。
独特のにおいを放つことがあるため、臭いで気付くこともあります。
通常、痛みはありませんが炎症を起こし化膿すると炎症性粉瘤となり、腫れや痛みを伴います。
そのような場合、排膿する(膿を出す)と症状は楽になりますが無理に強く圧迫排膿すると袋が破け、内容物が皮下脂肪組織に散らばり、膿皮症という状態になることがありますので注意が必要です。
粉瘤内容に炎症が起こると嫌気性菌のプロプリオバクテリウムが増殖し、この菌によりプロプリン酸が産生されとても強い悪臭を生じます。
粉瘤の治療
粉瘤は開口部から内容物を押し出すと一時的にしこりが小さくなりますが、
袋構造が残りますので再度内容物がたまり再発することになります。
飲み薬や塗り薬だけの治療は一時的に症状を抑えることはできても
中の袋が無くならない限り粉瘤は根治できないため、最終的には摘出手術が必要です。
手術後の傷のことを考えると大きくならない内に手術を受けることをお勧めしています。
粉瘤の治療は化膿している場合とそうでない場合で治療内容が変わってきます。
1):化膿している場合
化膿している場合、化膿している部分に局所麻酔を施して切開して膿を出し、抗生剤を処方して十分炎症を抑えてから、残った腫瘤を摘出します。
2):化膿していない場合
化膿していない場合、そのまま手術にて摘出することが可能です。
手術には以下の2つの方法があります。
・切除手術
局所麻酔下、出来るだけ小さな皮膚切開(腫瘤の長径の半分の傷)で腫瘍を摘出します。
・くり抜法
局所麻酔下、表面の皮膚開口部及びその周りの皮膚をディスポーザブルパンチという直径4mmほどの円筒状のメスや手術用のメスで皮膚をくり抜きます。
くり抜いた後、内容物をもみだし、更に袋そのものを周りの組織から剥離してできるだけ取り除きます。
傷の部分は止血を確認した後、縫わずに抗生剤軟膏で治療します。
その傷が塞がるには2-3週間かかりますが創そのものは切開法より、小さくなります。
また、過去に炎症を起こした症例では摘出が難しいことがあります。
粉瘤と鑑別診断を要する疾患
できものの治療において、粉瘤の他に可能性がある複数の病気を比較しながら診断しております。
外陰部のできものに関しては以下のものも考えられます。
- 毛嚢炎、毛包炎、せつ(おでき)、よう:毛穴の細菌感染症
- 尖圭コンジローム:HPVウィルスによる性感染症
- バルトリン腺嚢胞、腺膿腫
- 性器ヘルペス:ヘルペスウィルスによる性感染症
- 尿道カルンクル:尿道付近の良性腫瘍
デリケートゾーンの悩みは
なかなか周りに相談しづらいかと思います。
是非婦人科専門医にご相談ください。