外陰部のできもの(粉瘤と鑑別診断をy|文京区の子宮がん検診・治療が受けられる産婦人科

院長ブログ

(Blog)外陰部のできもの

デリケートゾーンのお悩みに関して先月は粉瘤についてお知らせしました。

治療にするにあたって粉瘤先月のBlog参照)以外に考えられる疾患には以下のようなものがあります。

目次

  1. 毛嚢炎、毛包炎、せつ(おでき)、よう:毛穴の細菌感染症
  2. 尖圭コンジローム:HPVウィルスによる性感染症
  3. バルトリン腺嚢胞、腺膿腫
  4. 性器ヘルペス:ヘルペスウィルスによる性感染症
  5. 尿道カルンクル:尿道付近の良性腫瘍

※それぞれの症状の説明に直接飛ぶことができます※

1.毛嚢炎、毛包炎、せつ(おでき)、よう:毛穴の細菌感染症

毛穴に起こった細菌感染症は大きさによって、毛包炎ーせつーせつ腫症ーようと定義されます。

毛穴一つの化膿:せつ
毛穴数個の化膿:せつ腫症
更に拡大した化膿:よう

原因:細菌感染の原因菌でもっとも多いのは黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、溶血性連鎖球菌などです。真菌が原因になることもあります。

原因としてはムダ毛の処理、スポンジの使用などによる小さな傷、発汗、ステロイド外用薬の使用などがあげられます。

症状:毛穴の紅斑、丘疹(毛包炎)を初発症状として次第に発赤、熱感、腫脹(しゅちょう、腫れる)を伴い
中心部に膿点(うんでいるところ)や痂皮(かひ:かさぶた)を生じます(せつ)

複数の毛包炎に拡大(せつ腫症)
さらに鶏卵大以上に拡大し、表面壊死や膿が出たりかさぶたの付着などを伴うこともあります(よう)

<せつ><よう>では全身性の発熱を伴うこともあり
そのような場合には膿汁の細菌培養、抗菌剤に対する感受性試験も必要になります。
血液検査では白血球上昇、核の左方移動、CRP(炎症を起こすと増えるタンパク質)上昇などがみられることがあり注意が必要です。

治療:膿んでいない毛穴1個の炎症である<せつ>に対しては抗菌剤の投与のみで治療が可能です。
膿んでいる場合は抗菌剤に加えて、積極的に切開して膿を出す必要があります。

より重症である<よう>では表面のかさぶたや膿を積極的に取り除いて洗浄する必要があります。
<せつ><よう>は炎症性粉瘤と見分けて診断する必要があります。
炎症性粉瘤では開口部を持つことが多く診断のポイントとなります。

2.尖圭コンジローム

主にヒトパピローマウイルス(HPV6,11型など)の感染で発症する性感染症の一つです。
感染後3週間から8カ月程度の潜伏期間を経て、外陰部、肛門内側、膣内、子宮膣部、尿道、舌、喉などに様々な大きさのイボを生じます。

症状:発症部位の痛みはありませんが、かゆみや違和感などがみられます。イボの状態はカリフラワーや鶏のトサカに例えられます。自然に消失することもありますが治療しても再発を繰り返すことが少なくありません。

治療:べセルナクリームなどの塗り薬を塗布します。塗り薬での改善が難しい場合には外的切除、レーザー照射、電気メス、冷凍凝固法などの治療法を選択します。
再発する場合には感知するまで治療を続ける必要があります。

尖圭コンジロームと鑑別が必要なものに膣前庭乳頭腫症がありますが病的なものではありません。両側小陰唇内側に小さな突起物ができる症状で、3%酢酸で加工してもコンジローマと違い白く濁って見えません。

また、妊娠中の尖圭コンジロームでは経膣分娩時、新生児の気道が感染して治療が難しい気道内乳頭腫を発症する危険性があるので注意が必要です。分娩前に治療しておく必要があります。

子宮頸がんワクチン(4価、6価、9価)の接種は子宮頸がんの前がん病変予防とともに尖圭コンジローム予防にも有効です。

3.バルトリン腺嚢胞、腺脳腫

バルトリン腺(膣入口部の左右にある分泌腺)の開口部に嚢胞ができる疾患です。

開口部が炎症や損傷などによって閉塞を起こし、バルトリン腺の導管内に粘液がたまることでバルトリン腺嚢腫が生じます。それに細菌感染が起きると炎症が起こり膿がたまります。原因菌としては大腸菌、ブドウ球菌群、連鎖球菌群などがあげられます。

症状:バルトリン腺嚢胞は嚢胞による腫れがみられる程度で痛みなどはなく無症状です。細菌感染によりバルトリン腺嚢腫瘍に進行する、腫れ・不快感・痛み・熱感・発熱などの症状を引き起こします。

治療:嚢胞のみの場合では無症状で日常生活には支障をきたさないので治療の必要はありません。感染を起こし痛みなどの症状が強い場合には治療を行います。抗生剤や消炎鎮痛剤を処方し併せて切開して膿を出します。
切開して膿を出す場合には排膿口が塞がらないように造袋術を施すことがあります。内部にたまった膿を持続的に出るようにするためのものです。
また何度も再発する場合にはバルトリン腺の全摘手術を行います。

4.性器ヘルペス

主に性行為による接触によって単純ヘルペス(主にHSV2型)が性器へ感染して発症する性感染症です。
性交渉以外でもウィルスが付着する手指や器具(洋式トイレの便座、公衆浴場のいすなど)に触れることでも感染することがあります。
一度感染するとウィルスが感覚神経節に潜伏し、免疫力の低下により再発することがあります。症状は初感染時より軽いことが多いです。
症状が強く出ているとき、水疱、潰瘍がある時期には感染するリスクが高いため同居している家族は感染しないように注意が必要です。

また妊婦さんでは分娩前に性器ヘルペスがあった場合経膣分娩では新生児に感染する危険があるため帝王切開が選択されます。新生児のヘルペス感染は重篤な症状を呈することが多く注意が必要です。

症状:潜伏期間は2-10日で症状の出始めは刺されるような強い痛みを伴う外陰部の水疱や潰瘍(かいよう)です。排尿痛、鼠経リンパ節の腫れ、発熱、頭痛倦怠感などを伴うこともあります。

治療:診断がつき次第、抗ウィルス剤を処方します。重症例では抗ウィルス剤の点滴治療を行います。病変部に抗ウィルス剤の軟膏も使用することがあります。
再発を繰り返す症例では継続的に治療薬を服用することがあります。

5.尿道カルンクル

多くは更年期以降に尿道付近に見られるポリープ様の良性腫瘍です。長さ5-10mm、幅5mm前後の円筒形の硬い腫瘤です。

症状:異物感で出血でかゆみ痛みを自覚することがあります。

治療:ステロイド含有軟骨を塗布します。治療でも症状が取れず大きくなり排尿障害をきたす場合には外科的に切除します。

ページの先頭へ