腸内フローラと膣内フローラ|文京区の子宮がん検診・治療が受けられる産婦人科

院長ブログ

(Blog)腸内フローラと膣内フローラ

~常在細菌叢(じょうざいさいきんそう)を整えましょう~

  1. 腸内フローラとは
  2. 腸内フローラの変化による症状と疾患
  3. 腸内フローラの改善について
  4. 腸内フローラと膣内フローラ、子宮内フローラとの不思議な関係
  5. 膣内フローラの善玉菌:乳酸桿菌(ラクトバチルス:にゅうさんかんきん)
  6. 膣内フローラが乱れると
  7. 膣内フローラを豊かにするには
腸内フローラとは

私たちの体には腸内だけでなく、口腔内や皮膚などいたるところで常在菌健康保持のために働いています。
腸内には1000種類以上もの細菌が約100兆個も生息しており、腸内環境を形成しています(腸内フローラ)。
どの種類の細菌が、どのような割合で存在するかは個人差が大きいとされています。

腸内細菌には大きく分けて善玉菌悪玉菌日和見菌の3種類があります。

善玉菌としては乳酸菌やビフィズス菌などがあり、腸内を弱酸性に維持し、腸内環境を整える働きを持ちます。
悪玉菌としてはウェルシュ菌やブドウ球菌などがあり、時に毒性物質を作りだして腸内環境を悪化させる働きをもちます。
また、日和見菌は善玉菌、悪玉菌、どちらにもなりうる菌で、多い方の菌と同じ働きをします。善玉菌が減少すると腸内環境は悪化して様々な病気を引き起こします。

腸内の善玉菌、悪玉菌、日和見菌の割合は個人差があり、食生活の乱れやストレスなどの生活環境、抗生剤の乱用、加齢などによって変化します。

理想的な割合は善玉菌、悪玉菌、日和見菌が2:1:7の状態とされています。
また、善玉菌だけが良い菌ということではなく、悪玉菌も日和見菌も必要な働きをしており、
あくまでもそのバランスが重要です。

腸内フローラの変化による、症状と疾患

腸内フローラのバランスが乱れて悪玉菌が優勢になると毒性物質が多く産生され、便秘や下痢などの症状が起こりやすくなります。
また、腸の粘膜は種々の免疫細胞を作り出すことによって免疫に深くかかわっていますので腸内フローラのバランスが乱れると様々な疾患を引き起こすことが考えられます。
糖尿病、動脈硬化、認知症、肥満、クローン病や潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患などとの関係が指摘されています。

腸内フローラの改善について

腸内フローラの乱れによって症状が出る前に腸内フローラのバランスを改善することが大切です。そのためには善玉菌を増やし腸内を弱酸性にすることにより、悪玉菌の増殖を抑えることも可能です。
善玉菌を増やすには善玉菌そのものであるプロバイオティクス(Probiotics)を摂取することや、善玉菌を増やす作用のあるプレバイオティクスを摂取することが勧められています。

プロバイオティクスとは適量を摂取することにより有用な効果を発揮する微生物のことです。
プロバイオティクスを含む食品としてはヨーグルト、納豆、ぬか漬けやキムチなどの発酵食品があげられます。
プレバイオティクスは腸内の有用菌の活動を促す物質のことで、オリゴ糖や食物繊維を含む野菜や果物があげられます。

各種サプリメントや特定健康食品などを活用するのもよいでしょう。
便秘や下痢などの不調が改善しない場合には下剤、整腸剤などの薬物療法が必要になることも少なくありません。

腸内フローラと膣内フローラ、子宮内フローラとの不思議な関係

腸内に腸内細菌叢(腸内フローラ)があるように
膣内にも膣内細菌叢(膣内フローラ)があり、子宮内にも子宮内細菌叢(子宮内フローラ)があります。
これらの臓器はお隣同士ですので腸内常在菌の一部が膣内へ、膣内から子宮内へ、移行することがあります。
腸内フローラと膣内フローラ、子宮内フローラが密接にかかわりあっていると言えるでしょう。

膣内フローラの善玉菌:乳酸桿菌(ラクトバチルス:にゅうさんかんきん)

出生時、主に母親の産道を介して膣内に生着すると言われています。

また、この菌は膣上皮細胞の細胞質に存在するグリコーゲンを分解して乳酸を産生し、膣内を酸性に保つことで、その他の病原菌の増殖を抑え、膣内環境を整えます。

また、この乳酸桿菌(にゅうさんかんきん)は膣から、宮内に移行して子宮内細菌叢(子宮内フローラ)を形成して、子宮内を酸性に保つことにより、受精、受精卵の着床に向けて子宮内環境を整えます。

時に、抗生剤の長期投与や過度な膣洗浄などで膣内フローラがダメージを受けた場合には健康な腸内フローラから、乳酸菌などの善玉菌が膣にも移り、膣内フローラの状態を改善してくれることが期待できます。

膣内フローラが乱れると

膣内フローラが乱れ乳酸桿菌が激減して、膣の自浄作用が低下した細菌性膣症(主に嫌気性菌感染)では子宮内フローラも乱されます。
その結果、子宮内膜では乳酸桿菌が嫌気性菌(けんきせいきん)などに置き換わり、慢性子宮内膜炎を併発します。

そうなると、子宮内膜の免疫活性が活発となり、受精卵を異物として攻撃して着床を妨げたり流産になったりすることで、妊娠率を低下させます。
細菌性膣症慢性子宮内膜炎の症例はフラジールなどの嫌気性菌に対する抗生剤で治療を行います。

そこで善玉菌が優勢健康な腸内フローラ維持していれば、乳酸桿菌が再度膣に戻り、膣内フローラの状態も良くなりひいては子宮内フローラの状態も良くなることとなります。

膣内フローラを豊かにするには

善玉菌が優勢である健康な腸内フローラを保つとともに、膣内フローラに悪影響を及ぼす以下の点にも注意が必要です。

乳酸桿菌による膣の自浄作用を妨げることです。
膣の頻繁な洗浄、長時間のタンポン使用、喫煙、抗生剤の長期使用などを避け通気性のよい下着の着用、十分な休養、適度な運動などを心掛けます。

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