(Blog)キャンディーニューロンとホットフラッシュ:更年期障害|文京区の子宮がん検診・治療が受けられる産婦人科

院長ブログ

(Blog)キャンディーニューロンとホットフラッシュ:更年期障害

新しい更年期障害治療薬フェゾリネタント(ニューロキニンB受容体阻害剤)について

昨年、閉経に伴って現れることがある顔のほてりやのぼせなどのホットフラッシュと呼ばれる症状を抑える更年期障害向け治療薬(フェゾリネタント)が米国食品医薬局(FDA)から承認されました。
非ホルモン剤として注目されています。

閉経前は卵巣からエストロゲンというホルモンが分泌され、ニューロキニンBという神経伝達物質とバランスをとって体温を調節しています。
しかし、閉経に伴ってエストロゲンが減るとバランスが崩れて体温調節がうまくいかなくなります
※ニューロンとは生物の脳を構成する神経細胞のこと

フェゾリネタントはニューロキニンB(神経伝達物質)がニューロキニン3受容体という脳内のたんぱく質に結合するのを防いで体温調節のバランスを回復する薬です。

これまでは更年期障害の症状に対して、エストロゲン製剤を用いたホルモン補充療法が行われていますが、乳がんや血栓症の発症リスクを高める可能性が指摘されています。
これに対して、初の非ホルモン治療薬として承認されたフェゾリネタントには、その心配がありません。

ニューロキノンB(神経伝達物質)とホットフラッシュとの関係について

卵巣における卵胞発育、排卵、黄体化といった性周期は脳の主に視床下部(ホルモン分泌を調整する部分)にある前腹側室周囲核と弓状核の2か所において制御されています。

主に卵巣から周期的に分泌される各濃度のエストロゲンの働きには視床下部の前腹側室周囲核に対して排卵を促進するように作用するエストロゲンのポジテイブフィードバックと視床下部の弓状核に対して抑制的に作用するエストロゲンのネガテイブフィードバックの二通りがあります。

エストロゲン濃度が比較的に低い一定の範囲内にある場合は、弓状核に対するネガティブフィードックにより、キスペクチン産生細胞からのキスペクチン(性腺刺激ホルモン分泌促進作用するたんぱく質)の分泌が抑制され、GnRH(Gonadotoropin Releasing Hormone, GnRH:性腺刺激ホルモン)の分泌も負に調節されます。その結果LH(黄体化ホルモン),FSH(卵胞刺激ホルモン)の分泌も負に調節されます。

一方、卵胞が発育し、エストロゲンが一定の濃度を超えるとポジティブフィードバックが働き、前腹側室周囲核のキスペクチン産生細胞から、キスペクチンの分泌が促進されます。
その結果、性腺刺激ホルモン分泌正に調節され、その結果LHサージ(排卵を起こす黄体ホルモンの波)が引き起こされ、排卵につながります

また、弓状核のキスペクチン(Kisspeptin,KISS)を産生する細胞はニューロキニンB(neurokinin B,NKB),ダイノルフィンA(dainorphin A,Dyn)も含んでいることが解り、Kキャンディーニューロン(細胞)と呼ばれています。

この細胞にはエストロゲン以外にも、レプチン、グルココルチコイドの受容体が発現しているので、この細胞と栄養状態やストレスなどの全身状態との関係が注目されています。飢餓やストレスによる、月経不順を考える上では大変重要な情報です。

更年期にはこのエストロゲンが更に低下することにより、このネガティブフィードバックによる抑制がとれ、キャンディーニューロンが盛んに活動するようになり、細胞が肥大化します。

キャンディーニューロンの一つである分泌を促進しさせるニューロキニンB(NK)がその受容体であるNK3受容体と結合し、視床下部の温度中枢(視床下部視索前野)に作用してホットフラッシュなどの血管運動神経症状が発生すると考えられています。

この過程から、ホットフラッシュなどの治療薬開発が始まりました。

現在はNK-1,3受容体阻害剤(エリンザネント)、NK-3受容体阻害剤(フェゾリネタント)の研究、開発、販売計画が進められており、近い将来日本でも市販されると思います。

副作用も軽い肝障害,頭痛などがありますが、重篤の副作用は認めないようです。
一方、米国では1カ月の薬剤費が550ドルと高額ですが、その効果が期待されています。

残念ながら新薬の日本での承認はまだですが、
昨年は入荷が困難だったプラセンタ注射が今年は十分に可能となっています。

当院ではその他にもホルモン療法、漢方、サプリメントなど
おひとりおひとりに合わせた治療を心がけております。

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