PMS|文京区の子宮がん検診・治療が受けられる産婦人科

院長ブログ

(Blog)PMS(生理前症候群)について

生理前の不快な症状に困っていませんか

ー目次ー
1.PMSとは
2.PMSの症状
3.PMSの治療

最近生理前の体調の変化でお困りの方がたくさんいらっしゃいます。
PMS(月経前症候群)という言葉で聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
PMSとは黄体期に続く多彩な精神症状、身体症状で月経開始後、4日以内に減弱消失することを特徴とします。

PMSは、二つの卵胞ホルモン(エストロゲン)黄体ホルモン(プロゲストロン)が生理前の黄体期に急激に変動することで脳内ホルモンや神経伝達物質の異常を引き起こし発症するといわれています。

しかし、個々のケースで症状が異なり、全く症状のない人から重症の人まであり
ホルモンだけでなく過剰なストレス状態、個人の感受性の違い、自律神経系
脳内ホルモンや神経伝達物質などが複雑に絡み合って症状を引き起こすと考えられます。

生理前もつらい!PMS(生理前症候群)とは?
どんな治療があるの?

PMSの症状としては情緒不安定、イライラ、怒り、抑うつ症状、不安感などが多くに認められます。
自律神経症状としては全身ののぼせ、食慾不振、頭重感、めまい、倦怠感、疲労感と多岐にわたります。
身体症状としては腹痛、頭痛、腰痛、全身のむくみ、乳房の張りなどがあります。

PMSの環境からくる原因としてはストレスが大きいとされています。
性格面では真面目、几帳面、完璧主義の方に認められやすいといわれます。
また、カフェインを過剰に摂取、バランスに悪い食事など、食生活が乱れている場合に重症化する傾向があります。
精神症状が顕著な場合には気分障害やうつ病などの精神疾患、甲状腺機能異常などにも注意が必要です。

治療のタイミングと方法

治療の開始に基準はなく、日常生活に支障が出るようであれば開始するとよいでしょう。
治療にはカウンセリング、生活指導、薬物治療があります。
疾患の理解、治療の効果を測るためにも症状と生理との関係を記録して重症度と治療の改善度を認識することが大切です。

生活指導
規則正しい生活、十分な睡眠、適度な運動が重要です。
特に外出して運動することは気分転換にもなりますが、無理強いしては逆効果ですので無理のない範囲で行いましょう。

対症療法
頭痛、腹痛時には鎮痛剤の服用、浮腫時には利尿剤、精神不安には精神安定剤などがあります。
根本治療としては卵胞ホルモン、黄体ホルモンをターゲットとしたOC/ LEP(低用量ピル、低用量ホルモン剤)などのホルモン療法、脳内伝達物質である、セロトニンをターゲットとする選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI:抗うつ薬投与などの2つがあります。

ホルモン療法

卵胞ホルモンは交感神経亢進作用(イライラのぼせ怒り頭痛
黄体ホルモンは副交感神経亢進作用(抑うつ症状)があるため
これらのホルモンの急激で大きな変動が要因の一つになっていることから、排卵を止めてホルモンの変動を少なくする治療です。

OC(低用量ピル)は低用量経口避妊薬で自費処方です。
LEP(低用量エストロゲン、プロゲスチン配合剤)保険処方です。

これらの薬は副作用が少なく、服用している期間だけ、一時的に排卵を止めるものなので服用を止めると排卵は回復します。その後の妊娠には影響を与えません。

SSRIなどの抗うつ薬もうつ症状には効果がありますが使用法が難しく、短期間の使用ならともかく、安易に長期間使用することは避けたいものです。

最後に漢方薬によるPMS治療です。

漢方治療の根本は患者さんが(陰、陽)(虚、実)のどこにいるのか、
(気、血、水)にどんな異常を生じているのかなどを把握して
その人の状態(証)を見極めるために医師の五感をフルに活用して行われる漢方独特の診断法があります。

それが望診(目で見る診断法)、聞診(耳と鼻で情報を得る診断法)、問診(患者さんの自覚症状の確認)、切診(患者さんの体に直接触れて行う診断法)の4つです。

この4つの方法で処方するのが理想ですが現実には困難で
当院では自覚症状に虚証、実証(患者さんの体質)を加味して処方しております。

漢方薬は効果が出るまで2週間かかると言われますが漢方薬により、
また個人によりますが短期間の服用で効果を示すことが少なくありません。

当院ではイライラや怒りに対して症状が出る直前より
加味逍遥散、抑肝散(陳皮半夏)
抑うつ症状に対しては症状が出る直前より
桂枝加竜骨牡蛎湯+苓桂朮甘湯 又は香蘇散を症状が消失するまで処方します。
涙があふれ出て涙目になる流涙症状ヒステリー症状には
甘麦大そう湯を症状が出たときに服用していただくことで効果を認めております。
その他症例により、大柴胡湯 半夏白朮天麻湯 半夏厚朴湯 加味帰脾湯 柴胡加竜骨牡蛎等 柴胡桂枝乾姜湯などを処方しています。

ところで漢方薬は副作用が少ないと言われておりますが注意しなければいけない副作用があります。
成分の甘草、オウゴン、半夏などによる副作用です。
甘草は1日2,5g以上常用すると高血圧むくみ、低カリウム血症などを発症する偽アルドステロン症になることがあり、特に高齢者は注意が必要です。
オウゴン半夏は長期間服用することでアレルギー反応 間質性肺炎などの重篤な合併症の可能性があり、症状に注意しなければなりません。処方時に詳しく説明しますのでご安心ください。

漢方薬とLEP(低用量ホルモン剤)の併用も可能ですがLEP(低用量ホルモン剤)だけで漢方薬が必要なくなる例が多く、LEPを使わず漢方薬だけで軽快される例も少なくありません。
いずれにしても症状が軽快ししばらくしてから、本人の自信がついた段階で終薬することを目標にしております。

以上
PMSの症状、治療法について説明してきました。
一人ひとり症状が違い向き合うのは難しいこともありますが
当院は一人一人に合わせた治療、処方を心がけております。
ご質問がありましたらお聞きください。

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