院長ブログ
(Blog)子宮頸がん(ヒトパピローマウイルス感染症)とHPVワクチン
- ヒトパピローマウィルス(HPV)について
- 子宮頸がんにならないためにできること
ヒトパピローマウイルス(HPV)について
ヒトパピローマウィルス(HPV)は、主に性交渉などにより生殖器の粘膜や皮膚にイボや前がん病変をつくるウィルスで200種類以上が分類されています。
そのうち、子宮頚がんに進みやすいハイリスクなヒトパピローマウィルス(HPV)は
16,18,31,33,45,52,58、8つの型です。
その中でも16,18型の2種類はとりわけ、頻度も高く悪性になりやすくかつ進行も早い
と言われ注意が必要です。
その他中咽頭癌、食道がん、肛門がん、膣がん、外陰がん、陰茎がんなどの発症に関連します。
また、ヒトパピローマウィルス(HPV)は若い人ほど感染しやすいことが分かっています。
ヒトパピローマウィルス(HPV)6・11型(低リスク型)は、
尖圭コンジロームや呼吸器乳頭腫の原因になります。
特に母親の6型11型の感染が産道を介して新生児に感染し、気道に呼吸器乳頭腫が発生した場合、
がんにはなりませんが再発性呼吸器乳頭腫となり、治療に難渋することがあり注意が必要です。
分娩前に尖圭コンジロームを治療する、場合によってはリスクを回避するために
帝王切開が必要になることがあります。
子宮頸がんの原因になるHPVは性行為だけでなく皮膚の接触による感染を含め
女性の約80%は知らないうちに感染しています。
さらに、最近は性行為開始が低年齢化しており、そのため、20-40代の若い年齢での感染者が急増しています。
感染者の内、約90%は知らないうちにウィルスが消失しますが約10%は感染が持続して約4%の方は前がん状態になります。
さらに前がん状態の内、10%以下の方がゆっくりと進行して本当の癌になります。
わが国では子宮頚がんは1年間に約10000人の女性に発症し、毎年約2800人が亡くなる大変な疾患です。
子宮頸がんで苦しまないためにできることが2つあります。
①HPVワクチン
子宮頸がんワクチンは性交渉前の接種が、一番効果的とされており、おおむね中学1年生から、高校1年生の間です。
ワクチンの種類としては初期に発売された2価ワクチン(16型18型に対するサーバリックス)、次に発売された4価ワクチン(6型11型16型18型に対するガーダシル)
最新の9価ワクチン(6,11,16,18,31,33,45,52,58型に対するシルガード)があります。公費でどれも打てるようになりますが近い将来、9価ワクチンに置き換わると思います。
世界では広くHPVワクチンが接種され、子宮がんなどの発生予防に著しい効果を上げています。日本では普通のワクチンでも一定の割合で認められる副反応を問題とすることにより、平成25(2013)年6月から積極的なHPVワクチン接種の勧告が差し控えられていました。しかし有効性と安全性が認められHPVワクチン積極的接種勧奨が令和4年(2022)年4月から再開されています。
この数年、コロナ禍でのコロナワクチン接種の普及から、HPVワクチン接種に対する抵抗感や偏見も改善されつつあります。
しかし、現時点でも、HPVワクチン接種が元に戻らず、低迷しているのが現状です。
9価ワクチンも令和5(2023)年4月から、公費助成が開始予定ですのでこれを機会にHPVワクチン接種が普及し、将来日本においても子宮がんが減少してくることを期待しています。
厚生労働省のホームページには
小学6年生から高校1年相当の女の子と保護者の方に向けてのリーフレットが載っています。
気になる方は参考にしてみてください。
平成9年度生まれ~平成17年度生まれ(誕生日が1997年4月2日から2006年4月1日)までの女性の中に、小学校6年から高校1年までにHPVワクチン接種の機会を逃した方がいらっしゃいます。過去に1回のみ、または2回のみ接種の方も対象となります。対象の方は公費で接種を受けられます。ご相談ください。
②20歳になったら子宮頸がん検診を受けましょう。
HPVワクチンを受けていても子宮がん検診は必要です。
2年に一度検診を受けることが大切です。